人間・演劇・からだとことばのレッスン(竹内敏晴)・野口体操(野口三千三)の研究と実践、ワークショップの開催、草野心平・宮澤賢治作品朗読劇制作・身体・声・心・言葉・朗読・身体表現

【不安・不安定・安心】+【7】 『四股の動き』 (野口体操→「四股のポーズ」)

【不安・不安定・安心】

安定した姿勢である。重心は足腰に落ち着き、上半身は鉛直線(地球の中心点と天頂を結ぶ線)が体軸と一致していてすっきりと軽く安定感がある。

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東洋的な身体観ではこれを「上虚下実」と呼ぶ。上半身は空っぽで力みがなく(虚)、下半身に力(エネルギー)が充ちて
(実)いる状態。

正月飾りの達磨さんがその象徴である。「七転び八起き」と云う。転んでも転んでも立ち上がって来る。野口三千三先生は「
したたか(健か・強か)」と説明していた。したたかとは「したたしか(下確か)」だと。次いでながら、「地に足が着いた生き方」と云う言葉もある。

この姿勢、爪先を出来る限り外側に向けてから、脚を鈎の字にするのでとても不安定。股関節を割り込むようにして直立した胴体を鉛直方向に下ろして行くときは、まるで綱渡りのような、からだ全体のバランス感覚への集中が求められる。倒れるか倒れないかのギリギリ微妙なところでバランスをとる。そのうえ脚の筋肉は総動員を求められ、普段は使わないため退化してしまっている筋肉も参加させられる。辛くて悲鳴をあげる。「ヒーッ!タイヘン!」となる。

そんな内側の状況をそのまま堪(こら)えて、からだを真っ直ぐに大きく支える。
やっている本人は気を抜けない。抜いたら姿勢が崩れてしまう。腰が充分に下りたところで、両手を挙げて「大の字」のまま静止。慣れないうちは10秒ともたないが、このときの立ち姿は、みんな堂々として美しい!自分の新たなからだの回復である。

外見は落ち着いて堂々として見える姿勢だが、内心は「ヒーッ!タイヘン!」の姿勢。実はこれがとても大切。
敢えて不安定な姿勢をとることで、普段の安定が崩れたところでからだ全体の隅々にまで、より深く繊細なバランス感覚を働かさなければならない。結果として、その姿からは日常的な曖昧さやだらしなさがそぎ落とされ、堂々として張りのある、それでいて開放感を伴った姿が現れる出る。

文明化は、生活の中から足腰の感覚を育てる機会を奪ってしまった。からだを支える足腰の感覚能力が低下することは、からだの土台におけるバランス対応能力を失うことである。足腰が能動的に変化しつつ姿勢を下支えし安定を保つことで、上半身は人間独自の細やかな作業や表現に専念することが出来る。

ところが足腰の働きが鈍く硬くなってしまっては、その不安定さを上半身の筋緊張でもって補わなければならない。脚が棒になり腰が固まれば、固定することなく地面に立てられた直径30cm高さ80cm余りの柱の上で、バランス曲芸を強いられているのと一緒である。これが不安の根本原因である。どんなに巧みにからだの安定を取るために、知恵を働かして手段を講じても、足腰の感受性が復活されない限り、不安は解消されることが無い。これでは落下や転倒の恐怖のために、こころが安心できないのが当然である。

短絡的に足腰を鍛えればいいと、筋力を付けることに一生懸命になる人がいるが、それでは感覚は育たない。
この動き(ポーズ)を適度に繰り返すことで、脚の筋感覚が目覚め、必要に応じて様々な筋肉がバランスよく発達してくる。からだの本来もっている安定が戻ってくれば、自然気持ちも安定感を取り戻す。やっと安心できるというものだ。


動作の詳細は【7】『四股(しこ)の動き』を参照して下さい。


【野口体操動画】
★一巡目もくじ★
【1】 ユラユラ ユルユル フワァー (野口体操→「ぶら下がり」) 【2】 正体を失う! (野口体操→「ぶら下がり」) 【3】 動きの中には『ゆるみ』があり『ゆるみ』が動きを生み出す 【4】 『ゆるみ』崩れ 流れ 動く (野口体操→「背中の百面相」) 【5】 からだバンジー (野口体操→「腕立てバウンド」) 【6】 一点逆立ち (野口体操→「ヨガの逆立ち」) 【7】 『四股の動き』(野口体操→「四股」) 【8】 『前突き!~☆』 (野口体操→「?」) 【9】 『お尻の妙なる響き』 (野口体操→「尻たたき」) 【10】 『膝で胸を打つ』 (野口体操→「むね打ち」) 【11】 『ゆ』のうごき(野口体操→「おへそのまたたき」)
★二巡目もくじ★
【1】+「肩凝り」  【2】+「骨」  【3】+「呼吸」  【4】+「自由自在」  【5】+「緊張と弛緩」  【6】+「理想・目標」  【7】+「不安・不安定・安心」  【8】+「姿勢・表現」  【9】+「知恵」  【10】+「満点」  【11】+「歪み」  【まとめ】+「これから」


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2011-12-19 : 野口体操 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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プロフィール

瀬戸嶋 充

Author:瀬戸嶋 充
声の産婆師。身体表現・身体コミュニケーション指導者。演出演技指導者。
1981年 竹内敏晴氏・野口三千三氏に師事。1984年 竹内演劇研究所レッスンスタッフ。1988年 人間と演劇研究所設立、からだとことばのレッスン・野口体操・演劇教室を指導。
その他、教育・医療・福祉・公民館等の現場に於いて、身体ワークショップや舞台上演を多数開催。
現在は、「身体・声・言葉」について、演劇の範疇をこえて、レッスンの場を広げている。
草野心平・宮澤賢治の詩と物語を愛す。

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