人間・演劇・からだとことばのレッスン(竹内敏晴)・野口体操(野口三千三)の研究と実践、ワークショップの開催、草野心平・宮澤賢治作品朗読劇制作・身体・声・心・言葉・朗読・身体表現

【理想・目標】+【6】 一点逆立ち (野口体操→「ヨガの逆立ち」)

【理想・目標】

私がレッスンを通じて目指しているのはなにか?
たぶん、このブログをご覧になってくれた人たちの一番の疑問ではないだろうか?


呼吸と姿勢に関して云えば、赤ん坊が泣き声をあげているときのからだ全体の動きが呼吸の理想、赤ん坊が始めて立てるようになったときの立ち姿を姿勢の理想と、私は見ている。

赤ん坊が泣いているとき、胴体が大きく張り詰めて膨らんだり絞られたり、赤ん坊は手足も含めた全身で息をし自分を主張している。
大人になるに連れて、人はそれぞれの生い立ちや環境に応じて、自己流のからだ使いをからだに負い、呼吸もそれに応じて限定されたものとなって行く。とくに現代のような知能偏重の風潮の中では、からだの重心は上部にあがり、それに連れて腹部より上での呼吸が常識となる。腰や股関節・脚の呼吸へのかかわりは、忘れ去られてしまう。

それにも拘らず、赤ん坊のころの全身呼吸は、私たち一人ひとりのからだの中に常に息づいている。大人になってしまうと感じることも理解することも出来なくなってしまうのかもしれないが、私たちのからだの基底において全身呼吸が、生命活動を支えている。
この赤ん坊のときの全身呼吸の上に乗っかって、大人の呼吸は成り立っている。赤ん坊呼吸のベースなくしては、どんな呼吸法も成り立たないわけである。

私のレッスンの一つの志向は、私たちみんなのからだの中に息づいている、この赤ん坊のときの全身呼吸(以下仮に『赤ちゃん呼吸』と呼ぶ)を感じ取る能力を、自分の中に育てていく作業である。そのために、からだの緊張を緩め、細やかな感受性を育て深めていく。とくに普段はあまり注意を払うことの無い、胴体背側の感覚と腰から下の肢・脚・足の感覚を緩め育てていくことに重点を置いている。

一般に、呼吸法を学ぶ場合は、目的に応じて様々な呼吸や息遣いの知識ややり方を身に着ける訳だが、私のレッスンでは何かを身につけるということはしない。『赤ちゃん呼吸』は意識できていなかったり理解していないとしても、元々誰もが無為自然にやっている呼吸である。既に誰もが我が物としてやっている呼吸なのだから、自らの呼吸に注意を払えばよい。そして『赤ちゃん呼吸』への気付きを妨げている原因があれば、それを外していくのが『からだZEROレッスン』(ゆるみけーしょん体操)の道筋である。自分=『赤ちゃん呼吸』となることを目指しているとも云える。

レッスンの過程は、何かを積み上げていくプラス志向ではなく、本体(この場合は『赤ちゃん呼吸』)を残して残余を外していくマイナス志向となる。(この肯定的な意味での「マイナス志向」を理解することが大変難しい。時代の主流となる身体観から外れるのだろう。)

姿勢の理想を、赤ん坊の始めての立ち姿に求めることも、肯定的なマイナス志向につながる。
赤ん坊が始めて独り立ちをした瞬間、または立ち始めたばかりのころの様子は、なんとも頼りなく周囲の大人は転倒を心配してしまうくらい。けれどもその立ち姿には、大人のような硬さが無い、力みがまったく無いのである。むしろ植物が開花したときのような、思わず目を惹かれてしまうような、外に向かって開きだす柔らかく明るい雰囲気がある。意識的に身なりや振る舞いをまとう前の、基底となる立ち姿がここにある。(これも仮に『赤ちゃん立ち』と呼ぶ)

大人が立ち上がるとき、その姿には立ち上がろうとする意識と努力が見て取れる。私たちは普通、このような意識と努力を合わせて行動への意志と見なしている。けれども赤ん坊が立ち上がるとき、意識と努力と見て取れるものがその姿には無い。『赤ちゃん立ち』では「立とうとする意志そのものが立っている」姿がそこにある。そのような立ち方を私は理想としている。

立つことの基底にあって、私たちの姿を支えている意志の働きに身をまかせる練習(レッスン)が、写真の一点逆立ちである。

06_sakadati.jpg

意識的な緊張や努力によらずに、からだ全体を満たす、立つことの意志に自己を預ける。自然の理に負かせて立つべくして立つところ。その地点を全身で探るのがこの『一点逆立ち』である。

からだ全体の感覚に集中し、からだの意志の現われを妨げる緊張努力を解きほぐし手放していく。結果として、立とう・立たせようとする自分(意識)とそれに従う身体と云う、自己内の分離分裂は消え去る。何の計らい(計算や努力)もなく、ただ立つべくして立っている自分が在る。自然の働きに自分を預けきった独特の安心感と心地よさがある。無為自然と云う。在るが儘と云う。

野口三千三先生は「自分とは自然の分身としての自分」であると云っていた。野口体操はそのような意味での自分を発見するための実践である。
さらに思い出すのは、我が師匠竹内敏晴氏のからだ。私が竹内さんのアシスタントをしていた時代のこと、「おいバン、ちょっと(からだを)ゆすってくれ」と、竹内さんにからだほぐしをたびたび頼まれた(バンは研究所時代の私のニックネーム)。竹内さんのからだはまるで赤ん坊みたいだった。透明感があり触れてみるとからだの中まで手が入っていきそうな柔らかさが全身を満たしていた。天才肌という言葉は、まさに竹内さんのからだの在り様をあらわすために在ったのだろう。


【野口体操動画】
★一巡目もくじ★
【1】 ユラユラ ユルユル フワァー (野口体操→「ぶら下がり」) 【2】 正体を失う! (野口体操→「ぶら下がり」) 【3】 動きの中には『ゆるみ』があり『ゆるみ』が動きを生み出す 【4】 『ゆるみ』崩れ 流れ 動く (野口体操→「背中の百面相」) 【5】 からだバンジー (野口体操→「腕立てバウンド」) 【6】 一点逆立ち (野口体操→「ヨガの逆立ち」) 【7】 『四股の動き』(野口体操→「四股」) 【8】 『前突き!~☆』 (野口体操→「?」) 【9】 『お尻の妙なる響き』 (野口体操→「尻たたき」) 【10】 『膝で胸を打つ』 (野口体操→「むね打ち」) 【11】 『ゆ』のうごき(野口体操→「おへそのまたたき」)
★二巡目もくじ★
【1】+「肩凝り」  【2】+「骨」  【3】+「呼吸」  【4】+「自由自在」  【5】+「緊張と弛緩」  【6】+「理想・目標」  【7】+「不安・不安定・安心」  【8】+「姿勢・表現」  【9】+「知恵」  【10】+「満点」  【11】+「歪み」  【まとめ】+「これから」


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2011-12-19 : 野口体操 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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プロフィール

瀬戸嶋 充

Author:瀬戸嶋 充
声の産婆師。身体表現・身体コミュニケーション指導者。演出演技指導者。
1981年 竹内敏晴氏・野口三千三氏に師事。1984年 竹内演劇研究所レッスンスタッフ。1988年 人間と演劇研究所設立、からだとことばのレッスン・野口体操・演劇教室を指導。
その他、教育・医療・福祉・公民館等の現場に於いて、身体ワークショップや舞台上演を多数開催。
現在は、「身体・声・言葉」について、演劇の範疇をこえて、レッスンの場を広げている。
草野心平・宮澤賢治の詩と物語を愛す。

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