人間・演劇・からだとことばのレッスン(竹内敏晴)・野口体操(野口三千三)の研究と実践、ワークショップの開催、草野心平・宮澤賢治作品朗読劇制作・身体・声・心・言葉・朗読・身体表現

【自由自在】+【4】 『ゆるみ』 崩れ (野口体操→「背中の百面相」)

【自由自在】

この動きを野口体操や竹内レッスンでは「背中の百面相」と呼んでいた。百面相と云うくらいに、からだが実に様々な表情を見せている。

けれどもこれは百面相をしようと意識して動いてはいない。「ああしよう」「こうしよう」と頭で思い描いて動かしている訳でもない。その時々に「動きたいように動いている」だけだ。けれども、動きたいように動くって初めての人にはとても分かり辛いかも知れない。



「動きたいように動いて下さい」と云われると、たいていのひとが、回りの様子を伺ったり、どう動いたら良いか考えたり。そうしてから怖ず怖ずと動き出す。回りを伺うのも動きを考えるのも、からだの動きには違いないから、そうしたい(うごきたい)ならそれで構わないけど、そうしたくてそうしているのか?そうではなくて無自覚に、どう動かすべきか答えをさがしているのだろう。

答えを出してから動いたのでは、自由自在は不可能である。動きに先立って決められた答えの中に、動きが収められてしまう。自分で自由自在に動きたいと思いながらも、初めから「自由自在」と云う枠の中に自分を閉じ込めてしまう。これを不自由な「自由自在」とでも呼べばいいのか?頭がこんがらがる。

先ずはスターティングポジション。よつばいになって胴体の中身の緊張を緩める。首・肩・背中・腰の力を抜いて重さに任せて胴体をぶら下げる。息を深く吐く。自分なりに力が抜けたと思えれば好い。「スタンバイOK!」

04_yotubai01_01

「いざスタート!」となるのだが、その瞬間が難しい。スタンバイでちからが抜けているので、動きだそうとする瞬間、無意識のうちにからだに力を入れようとしている自分に気がつく。「動くためにはからだに力を入れて動かさなければならない」と云う、脳に書き込まれた指令が自動的に(無意識に)発されるのだろう。そのまま動き出してしまえば、既に脳に描かれた地図や図式に沿って、からだをうごかすことになる。新たな動きや思いがけない動きの生まれ出る可能性は、あらかじめ閉ざされてしまう。

自我意識は、既に把握されている範囲の外にからだが動き出すことを嫌う。無意識のうちに緊張によるストップがかかり、それでも踏み出そうと意志するとき、高い緊張感に襲われる。こうなってしまうと、からだは固まり身動きがつかなくなり、普通はからだを動かすことを諦めてしまう。

ところが、私はここに新たな動きの誕生のチャンスをみる。緊張の次元の高まったとき、それはダムに水が満杯になったときと思えばよい。その瞬間に内圧を押しとどめようとする緊張(=からだの力)を一挙に抜いてしまう。ダムであれば水門を一挙に開く。

つまり、スタンバイの姿勢を崩すのである。支えになっている腕や脚の柱を外し、全体のバランスを崩してしまう。後は流れ出したからだの動きの勢いに任せて、「動きたいように動け」ばよい。その勢いはからだを駆け巡り、型にはまらぬ多様な動きとなってからだを内側から突き動かす。

自分を取り繕おうとする自意識は、からだの流れに溶け去り、動きと自己との区別や距離は無くなる。自由自在の喜びがある。

思う存分動いたら、ゆっくり休息のポーズ。
写真は「ネコのあくびのポーズ」。

yotubai01._02.jpg

【余談】
『動き出すためには緊張ではなく、力を抜くことが先ず必要である!』と大きな声で叫びたくなる。
私たちの脳みそには「動き出すために必要なのは力を入れることである!!」と書き込まれているようである。これはからだの事実と照らし合わせれば間違いである。動きが始まるためには先ず、それまでの姿勢や緊張状態(バランス)を一旦崩さなければ、新たな身動きは不可能である。信号待ちのときにでも是非試して見てほしい。歩き出そうとする瞬間、僅かだが脚腰のバランスを『ゆるめ』て崩してから、脚を進行方向に振り出していることを。さらに『動き出すためには先ず力を抜く』ことを意識して歩き出してみてほしい。歩き出すのがとても楽になる。


【野口体操動画】
★一巡目もくじ★
【1】 ユラユラ ユルユル フワァー (野口体操→「ぶら下がり」) 【2】 正体を失う! (野口体操→「ぶら下がり」) 【3】 動きの中には『ゆるみ』があり『ゆるみ』が動きを生み出す 【4】 『ゆるみ』崩れ 流れ 動く (野口体操→「背中の百面相」) 【5】 からだバンジー (野口体操→「腕立てバウンド」) 【6】 一点逆立ち (野口体操→「ヨガの逆立ち」) 【7】 『四股の動き』(野口体操→「四股」) 【8】 『前突き!~☆』 (野口体操→「?」) 【9】 『お尻の妙なる響き』 (野口体操→「尻たたき」) 【10】 『膝で胸を打つ』 (野口体操→「むね打ち」) 【11】 『ゆ』のうごき(野口体操→「おへそのまたたき」)
★二巡目もくじ★
【1】+「肩凝り」  【2】+「骨」  【3】+「呼吸」  【4】+「自由自在」  【5】+「緊張と弛緩」  【6】+「理想・目標」  【7】+「不安・不安定・安心」  【8】+「姿勢・表現」  【9】+「知恵」  【10】+「満点」  【11】+「歪み」  【まとめ】+「これから」


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2011-12-19 : 野口体操 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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プロフィール

瀬戸嶋 充

Author:瀬戸嶋 充
声の産婆師。身体表現・身体コミュニケーション指導者。演出演技指導者。
1981年 竹内敏晴氏・野口三千三氏に師事。1984年 竹内演劇研究所レッスンスタッフ。1988年 人間と演劇研究所設立、からだとことばのレッスン・野口体操・演劇教室を指導。
その他、教育・医療・福祉・公民館等の現場に於いて、身体ワークショップや舞台上演を多数開催。
現在は、「身体・声・言葉」について、演劇の範疇をこえて、レッスンの場を広げている。
草野心平・宮澤賢治の詩と物語を愛す。

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