人間・演劇・からだとことばのレッスン(竹内敏晴)・野口体操(野口三千三)の研究と実践、ワークショップの開催、草野心平・宮澤賢治作品朗読劇制作・身体・声・心・言葉・朗読・身体表現

【呼吸】+【3】 動きの中には『ゆるみ』があり、『ゆるみ』が動きを生み出す

【呼吸】

この姿勢でゆっくり息を吐ききってみる。(写真は『ゆ』の動画【3】より抜粋)

「ゆっくり」と云うのは自分でゆっくりと感じられることが大切。からだのことは主観で決めるべし。何分何秒と云う他律的(客観的)なスケールを当て嵌める可からず。私達は自分を他と較べて相対的に位置付けて、自分のことが分かったような気になって安心すると云う、悪い癖がある。

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さておき、この姿勢でゆっくりと息を吐いていくと、上体自体(胴体)の重さで下垂が深くなって行く。『からだは息を吐くと力が抜ける』ように出来ているから。

吐き切ったところで一旦軽く息を止めてみる。口や喉は閉じない。緊張させないこと。腹部の緊張感のみで息を堪(こら)える。

緊張を緩めると、息が入ってくる。今度は一杯になるまで息を入れて止める。このときに上体は自重に任せて下垂したままにしておく。息を吸おうとしてからだを持ち上げないこと。すると息の流入に合わせて、背中や後ろ腰・尻が膨らんでくる。膨らましたまま息を堪える。くれぐれも口・喉で息を止めないこと。

何度か繰り返し、慣れてきたら息の入る場所を後ろ腰のくびれのところ(写真のグリーン帯)に集中し、ここを一杯に膨らます。吐くときはそこを絞って凹ませる。

これが『ゆ』の深呼吸。『せなか呼吸』とでも名付けようか。

この姿勢では、胴体前面の胸郭(肋骨)や腹部を(腹筋)膨らますことが出来ない。そのため、息を吸い込みからだの内圧が高まると、からだの背面側が内側から押し広げられて、背中や後ろ腰が風船のように膨らむ。息を吐くときには、背中側が伸び広げられた分だけ、重力によって上体が下降する。呼吸によって背中の緊張がゆるんだ分だけ自然と深く前傾していく。(この場合柔軟体操の前屈運動のように筋力と弾みでもって手のひらを床につけるような緊張努力をしてはならない。)

さらに、写真では直接見ることが出来ないが、息を吐くときには、腹筋の引き締めと内臓の重力による下降によって、「横隔膜」(呼吸筋)が胸郭内に深く押し込められる。この姿勢で息を吐ききれば、横隔膜(筋肉)は最大限に引き伸ばされて弛緩する。息を吸い入れるときには、横隔膜(筋肉)が緊張して腹部を押し上げる。内臓の重さがその負荷となり横隔膜の筋力を鍛えることになる。息の深さとは、横隔膜の弛緩時と緊張時との高低差である。肺活量が多いことと息の深さとは一致しない。

結果、腰から背中の緊張がほぐされ(ゆるみ)、立ち上がったときに背筋がスッキリと立つ。努力せずとも立ち姿が美しくなる。猫背や姿勢の悪さを気にしている人がいるが、それは背骨(体軸)の廻りの筋肉が縮こまって固まっているから。意志(筋力の緊張努力)でもって治そうとしても草臥れるだけで効果はあまり期待できない。それよりも背中のこわ張りを緩めて、背筋が伸びたときのスッキリ感(快感!)を知ることが大切。

また、肉体労働をしないので、普段の生活の中、横隔膜が充分に活躍する機会が減っている。使われること無ければ筋肉は衰える。この呼吸は横隔膜を直接に刺激する。

「腹が決まる」「腰が決まる」と云うが、これは腹筋群と横隔膜・骨盤とが協調して腹腔を四方八方から引き締めた状態である。このとき、からだの重心が腹部に安定して落ち着き、からだの動きの土台(大地・地球)となる。横隔膜より上部の胸や肩・腕・首・頭はこの安定した土台の上に置かれ、姿勢の安定を取る苦労からは解き放たれ、自らの役割に専念することが出来るようになる。このようなからだの在り方を東洋身体観では、『上虚下実』と称んで理想とする。読んで字の如しである。深い呼吸によってその土台が作られる。簡単に言えば『姿勢を支えるのは呼吸である』。

なお、写真のグリーン帯の部分。ここが充分にゆるんでいないと伸縮ができず、呼吸は深くならない。赤ん坊が泣いているとき、その腹部は風船が張り詰めたり縮んだり、まるで鞴(ふいご)で空気を送るように、背中を含めた腹全体が滞り無く大きく動く。赤ん坊の呼吸が全身呼吸(理想の呼吸)のお手本である。それに比べて大人の場合はここがガチガチに固まっている場合が多い。腰がそっくり返っていては、息は深くならない。それにも拘らず、腹式呼吸を得意としている人には、ここを固めている人が多い。何故だろう?



【野口体操動画】
★一巡目もくじ★
【1】 ユラユラ ユルユル フワァー (野口体操→「ぶら下がり」) 【2】 正体を失う! (野口体操→「ぶら下がり」) 【3】 動きの中には『ゆるみ』があり『ゆるみ』が動きを生み出す 【4】 『ゆるみ』崩れ 流れ 動く (野口体操→「背中の百面相」) 【5】 からだバンジー (野口体操→「腕立てバウンド」) 【6】 一点逆立ち (野口体操→「ヨガの逆立ち」) 【7】 『四股の動き』(野口体操→「四股」) 【8】 『前突き!~☆』 (野口体操→「?」) 【9】 『お尻の妙なる響き』 (野口体操→「尻たたき」) 【10】 『膝で胸を打つ』 (野口体操→「むね打ち」) 【11】 『ゆ』のうごき(野口体操→「おへそのまたたき」)
★二巡目もくじ★
【1】+「肩凝り」  【2】+「骨」  【3】+「呼吸」  【4】+「自由自在」  【5】+「緊張と弛緩」  【6】+「理想・目標」  【7】+「不安・不安定・安心」  【8】+「姿勢・表現」  【9】+「知恵」  【10】+「満点」  【11】+「歪み」  【まとめ】+「これから」


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2011-12-19 : 野口体操 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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プロフィール

瀬戸嶋 充

Author:瀬戸嶋 充
声の産婆師。身体表現・身体コミュニケーション指導者。演出演技指導者。
1981年 竹内敏晴氏・野口三千三氏に師事。1984年 竹内演劇研究所レッスンスタッフ。1988年 人間と演劇研究所設立、からだとことばのレッスン・野口体操・演劇教室を指導。
その他、教育・医療・福祉・公民館等の現場に於いて、身体ワークショップや舞台上演を多数開催。
現在は、「身体・声・言葉」について、演劇の範疇をこえて、レッスンの場を広げている。
草野心平・宮澤賢治の詩と物語を愛す。

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